コインランドリーとチキンライス
折角の日曜日、洗濯物でも干そうかなと昨日眠りについたのに、朝起きるとシトシト雨。
そんな日はコインランドリーに限る。
私はコインランドリーが好きだ。あの柔軟剤の香りと、ゴウンゴウンと沢山の洗濯物が軽やかに舞っている風景は、何とも見ているだけで穏やかな気持ちにさせてくれる。
お金はかかってしまうけど、コインランドリーで乾燥させたバスタオルは凄くもふもふしていて、日光浴させた布団に飛び込む感覚と似ている。贅沢、ズボラ、と人によっては後ろ指を刺してくるかもしれないが、あのモフモフは人を虜にさせる。お金をかけても良いものだと、少なくとも私は思っている。
そういえば小さい頃、実家の一番太陽が当たる窓辺の床で、よく布団に包まれて昼寝していた。私の欲求の優先順位は、幼少期の頃から変わっていないようだ。
さて今日もモフモフするぞ!とワクワクしながら洗濯物を一つだけ空いていた乾燥機に突っ込んで、10分ほど規則的に回る洗濯物をベンチに座って眺めた後、コインランドリーの真向かいにある行きつけのチキンライス屋さんに昼食を食べに行くことにした。
* 西荻窪 Mu-Hung
木目調のアジアンな店内。今日は休みの日ということもあってテーブル席はカップルや夫婦が席を占めていた。1人客は私だけのようなので、お邪魔にならないために誰も座っていないカウンター席へ。
ここはよく電話で予約してテイクアウトをしているお店なので、店内で食べるのは久しぶりだった。
スタッフは女性しかおらず、さっぱりとした接客が個人的に好き。至れり尽くせりの接客ももちろん気分は良いものだが、こういうお互い変に気を使わないでいられるお店も、まったり休日を過ごしたい人には心地が良いものだと思う。
メインのメニューはチキンライス。サイズは小・中・大とあるが、今日は小を頼んだ。
(チキンライス小 700円(税抜))
ご飯の量はお茶碗一杯とちょっとくらい。
キャベツの入ったスープもセットでついている。
チキンは蒸してあって、とても肉厚。揚げどりにすることも出来る。
中国しょうゆ、チリソース、しょうがのソースが1種類ずつシンプルな小皿に入った状態で出される。
それぞれのソースをチキンにチョンとつけるか、3種類全部かけて混ぜて食べるのがお店のオススメらしい。
全部ぶっかけるのが私流。
中国しょうゆが一番主張が強いが、混ぜると後からぴりっとしたチリソースが顔を出し、最後にここにいるよと優しくしょうがが口に広がる。
お米は粒がパラパラとしていて、タイ米に近い食感で、恐らく鶏出汁で炊いているのだと思う。お米単体でも食べたくなる美味しさ。
お箸で鶏を一口、スプーンでタレが少し染みたお米を一口、と丁寧に味わった後に、水々しいキュウリをかじる。この動作を自分のペースで繰り返す。
箸休めに食べる素材そのままのきゅうりの味。他の味がしっかりしてるからこそ、きゅうりの本来の味が引き立っているように感じる。きゅうりがこのお皿に乗っているからこそ、このチキンライスを最後まで美味しく食べられるのだと思う。
鶏肉は柔らかくプリプリしていて、脂っこさも無い。焼肉でもカルビよりこういうサッパリとした肉を年々胃が求めるようになってきたのは年のせいなんだろうか…。
カウンター席の目の前では女性店員がキビキビと料理をしている。たっぷりの氷水に蒸し鶏を浸してあって、そこに思い切り手を突っ込んで仕込みをしている姿はまさしく職人。カッコ良い女性達だ。
朝は食パンを適当に温めてたまごを適当にのせたものしか食べていなかったので、この手間暇をかけたチキンライスが凄くありがたいものに感じた。そんな事を考えながら黙々と食べていたらペロッと完食してしまっていた。
水を飲み干すと、チリソースが案外辛かったことに気付く。旨辛なものって、辛いという感想よりも旨いが先行しちゃうから、後々口の中がピリピリしていたりする。
「うん。今日も美味しかった。」
とボーッとスマホを見ると、まだ乾燥が終わるまで15分ほどあった。
はてさて、外は寒いし、口は辛い。どうしたもんか。
「あぁ…甘いものをもとめている…。」
(デブ街道まっしぐら)
私は今までチキンライスとビールしかここでは注文したことが無かったが、他にもメニューがあることは以前から知っていた。
卵料理にカレー、ピータン粥…へぇ赤ちゃん用の子供粥っていうのもあるんだ。
子連れの親子が背後に座っており、幼稚園くらいの女の子が何やらはしゃいでいたのでチラリと見てみると、
あらまぁチキンライスのお子様ランチ!旗まで立ってらぁ!
子供にとってお子様ランチには旗が立っているからこそのメニュー。流石やで。小さい頃は私もお子様ランチを食べ終わると旗を誇らしげに手に持ち帰ったものだ。
メニューの最後のページにはデザートメニューが。
君に…決めた!
最近何故かクレープを食べたいと思っていたのをメニューを見て思い出した。
「あの、すみません…このスイートロティお願いします。」
スイートロティというのは、薄く伸ばした小麦粉を焼き上げたタイのデザートメニューらしい。
ちょっと大食いかしら…と少し勝手に恥ずかしくなりながら注文を済ませて、しばし後ろの席のはじゃく子供の声を聞きながら待つ。
「お待たせしましたー」
「ぬっ…このボリュームで450円とな……」
大きさは大体500mlのペットボトルより一回り小さめくらい。値段的にもう少し小さいだろうなと踏んでいたので食べ切れるか急に不安になりつつ、フワッと鼻に届いた甘い香りにワクワク。
ナイフとフォークを使い、切り分けて口に運ぶ。
あまぁい…しあわせ…
クレープよりも厚めのしっかりとした生地。具はバナナのみだが、ソースはシナモンと練乳、そしてクリームチーズが使われているようだ。
バナナも結構熟した柔かいものを使っていて、食感も良い。
シナモンと練乳とクリームチーズという組み合わせも、生クリームよりクドくなくて嬉しい。
おかしいぞ全然食べれるぞと軽く平らげて食事を終えた。
さてと、行くかー!と足取り軽くモフモフが待つコインランドリーへ。
心なしか、家を出た時よりも空が明るく見えた。
こんな日曜日の小さな贅沢が、私の最近のご褒美。